世界樹の迷宮探検記 RSSフィード

2007-02-05

[][]理由 理由 - 世界樹の迷宮探検記 を含むブックマーク

彼等は大抵朝に出発して夜帰ってくる。そして宿には泊まらず水場で疲れを癒し、また迷宮へ向かう。夜明け前に戻ってくるとまた水場に向かうのだが大抵は夜が明けてしまい、帰還が日中になった場合は宿を使う。何故水場で休むだけで疲れを癒す事が出来るのか、というと、その水場で湧き出す水には不思議な力があるからだ。何故そのような魔力を秘めた霊水が湧き出しているのかを知る者は誰も居ない。あるいは、世界樹の迷宮の奥底の水源から湧き出す水なのかも知れない。また、この霊水は夜の間だけその不思議な力を顕す。日中と夜とでは湧き出す水の水源が異なるのか、それとも他の理由なのか、定かではないが、彼等がその恩恵に与ること事が出来るのは日が落ちてからだった。ともあれ、彼等はその水場を最大限活用する事で、少しでも節約をし、出来る限り自分達の武具に回そうと心がけていた。そんな彼等だが、今は宿に居る。昨夜からの冒険を終え、先ほど戻ってきたばかりだ。金鹿亭で食事をし、今夜のために休むところだった。部屋の中ではレプトルとウィーゲントの声がする。ビシャスはもう少し飲んでいくから、と言って他の連中を帰し、まだ金鹿亭で飲んでいるのだろう。

「ウィッツ、お前、死ぬのは怖くないのか?」

「もう死んだよ、はははは」

「いや、そういう意味じゃない。二度と生き返れない事があるかも知れない、という事がだ」

「わかってるよ。怖くない、なんて事は無い。でも僕にはあそこに行く理由があるんだ。だから死ぬことが怖いかどうか、なんて関係ないんだよ」

「そうか、その理由っていうのを聞いてもいいか?」

「別に隠すようなことじゃあ無いよ。僕は一つの預かり物があってね。それを持って行かなければならない場所が、あの迷宮の奥だっていうだけだよ」

「なんだそれは?」

「磁空石、って言うらしい。この石に向けられた音を遥か彼方まで届ける力を持っている、っていう話。使い方はよく知らないんだけどね」

不思議なものだな」

「ああ、なんだかよくわかんない。でもとりあえず、僕はこれを師匠から預かって、これを届けに行かなければならないんだよ」

修行か何かなのか?」

「いや、僕はもう修行は一通り終えてきているよ。これは修行とは何も関係が無い、単に師匠に頼まれたただのお使い」

「とんでもない師匠だな」

「ははは、ホントにね。でもまあ、あの人が言うことには今までも意味があった。これもきっと何か意味があるんだと思ってる」

「そうか」

「レプトルこそ、なんでまた迷宮なんかに?狩人なら、わざわざ迷宮になんて入らずとも暮らしていけるだろう?」

「そうだな。弓の扱いならその辺りの狩人に負けるとは思わない」

「ならどうして?」

「まあ、ついでみたいなもんだ」

「ついで?」

「ビシャスのお守りだよ。誰に頼まれたわけでもないがね」

「ぷっ、ホントに?ビシャスにお守りが必要だなんて、とても思えないんだけど」

「まあ、それでも親としては心配だろうさ」

「ああ、そういうことか」

「別に頼まれたわけじゃないがな。師匠が何かを心配する顔なんて見たくない、というだけだ」

「はー、よく出来たお弟子さんだ」

「茶化すな」

「ゴメンゴメン。そんなつもりじゃなかったんだけど」

「まあいい、もっともそれだけではなく、自分としても迷宮には興味があった、というのもあるのだがな」

「なるほどね」

「わざわざあのような場所に行くというのだ、皆それぞれ理由があるという事だな」

「紅やゼルアはなんで迷宮に行くんだろうね」

「さあな、気になるなら聞いてみたらどうだ」

「僕のことは聞いたくせに」

「それはそれだ。死に怯えるような人間だとは思っていなかったが、それでも一度死んだら考えが変わるかもしれん、それで聞いてみただけだ」

「心配してくれてたんだ」

「そんな上等なものでは無いぞ」

「ううん、ありがとう

「礼を言われるような類のことではない」

「まあ、いいじゃない」

「ふふっ、まあそうだな、そろそろ寝るか」

「ビシャスはまだ飲んでるのかな」

「どうだろうな、金鹿亭の者ならばビシャスは殆どが顔馴染だからな。誰ぞに捕まってるのかも知れん」

「ははは、そうかもね」

「まあ明日に影響が出なければいいさ」

「ん、そうだね。それじゃおやすみ」

「ああ、おやすみ」

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